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日蓮宗新聞 平成28年9月20日号
失敗は明日への糧
三井 妙真

「寄り添えた」という思い込み

 8月下旬、宮城県石巻市内にある女川町民が避難している仮設住宅を訪れ、夏祭りのお手伝いをしてきました。石巻に行く前日、この仮設住宅から自宅を自立再建したSさんから「明日会えるのを楽しみにしています」と携帯電話などで文章で会話をやり取りするLINE(ライン)からメッセージが来ました。私もSさんに会えるのを楽しみにしていましたが、お祭り当日は焼きそば担当で、せっかく会いに来てくれたSさんとはタイミングが悪くあいさつ程度にしか話せませんでした。本当は誰かに焼きそばを任せてSさんと再会を喜び合えばよかったのでしょうが、そんなことを考える余裕もなく、Sさんとは「お土産のホヤを集会所の冷蔵庫に入れておくので食べてね」と言葉を交わしたのが最後となってしまいました。「明日も仮設住宅に来るから」とメッセージを送信。ですが、Sさんは翌日お仕事で仮設住宅に来られませんでした。いつもSさんとはLINE。なぜ電話をかけなかったのだろう?今回、夏祭りを手伝ってくださった住民の方とはたくさん話をしたけれど、そうでない方とはほとんどお話をしていません。心残りの多い訪問となりました。
 話は替わって、父の17回忌法要での出来事。一般の方と同じくお寺の本堂で法要をしますが、いつも裏方の寺族が参列者。寺族が全員本堂に入ったら、その間の留守番がいない。話し合った結果、勝手口に貼紙をして、配達の人が来ても応対せずにいよう、と決めました。参列には10人以上のお坊さんがおり、大音量のお経が響き渡っていました。何となく本堂の外が気になり、お焼香が終わった妹に「本堂を出て留守番をして欲しい」と頼みました。妹はちょっと困った顔をしてから本堂を出ました。法要が終わり、本堂を出ると妹が泣いていました。私は感極まったのかと思いましたが、実は法要の最後まで本堂に居たかったのだと母から聞きました。父が大好きたった妹です。冷静に考えれば分かることでした。グリーフに時間の長さは関係ないのです。「寄り添うこと」を常に考えるようにしていたはずなのに、一番身近な家族に寄り添えませんでした。法事の後席で師僧が挨拶をした時に「失敗は明日への糧である」といった言葉が胸に刺さりました。
 良かれと思ってしたことが裏目に出ることはしばしばあります。人の心に寄り添うということはとても難しく、自分が「寄り添えた」と思うことではなく、相手に「寄り添ってもらえた」と感じてもらうことです。私にとって「明日への糧」がたくさんあったこの夏でした。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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