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日蓮宗新聞 令和3年4月20日号
死戦期帝王切開
富山県妙輪寺住職・産婦人科医師 日高 隆雄

「がんばれ!」必死の呼びかけにも…

 死戦期帝王切開はなんらかの原因によって心肺停止をきたした妊婦に対して救命処置の一環として行う緊急帝王切開です。産婦人科医療を描いたテレビドラマ「コウノドリ」にも出てきましたが、めったにないことです。
 大雪の日に交通事故に巻き込まれた初妊婦が救命救急センターに運ばれてきました。最近、高齢者の運転トラブルがよく話題になりますが、大雪による視界不良も影響した大変不幸な事故でした。到着時、妊婦さんは心肺停止状態で心臓に対する電気ショックを2回行いましたが無反応でした。妊婦が重篤な状態であれば、当然、赤ちゃんも危機的な状況におちいります。おなかの上から音波検査をしてみると、なんと、赤ちゃんの心臓は動いています。「お母さんも赤ちゃんも助けるぞ!」と号令、あわただしく死戦期帝王切開が開始されました。
 産婦人科のほかに救急科、小児科などの医師、看護師、総勢20人ほどのスタッフが協力し、まず、赤ちゃんを取り出しました。お母さんは救急医により、赤ちゃんは小児科医により懸命の救命処置が継続されました。夫も「がんばれ!!」と妻と赤ちゃんに対して必死の呼びかけを続けました。しかし、願いかなわず、2人とも救命することはできませんでした。
 夫婦にとってはやっと授かった初めての赤ちゃんでした。大変残念でしたが、お母さんと赤ちゃんは2人で手をつないで旅立ちました。一方、最愛の妻と待望の赤ちゃんを一瞬のうちに失った夫の心情はいかばかりのものでしょう。悲しみを乗り越えて、新たな一歩を踏み出していくことができるでしょうか。夫に対するグリーフケア(最愛の家族を失い、悲しみの中にいる人をサポートするケア)がとても重要です。
 当院へ搬送してくれた救急隊員から、事故現場にあった買い物袋が遺留品として届けられました。その中には、本来なら夕食の食卓に並んだはずのお肉や野菜などの食材がたくさん詰まっていました。
(日蓮宗ビハーラネットワーク世話人)
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