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日蓮宗新聞 令和3年10月20日号
ヤングケアラーについて
太田 喜久子 医師

家族のケアをする18歳未満の子たち

 近年「ヤングケアラー」という言葉が出てきました。「家族にケアを必要とする人がいる場合、大人が担うようなケアの責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」のことをいいます。調査によると中学生で17人に1人、高校生で24人に1人いるとされています。少子高齢化、世帯数の減少といった現象によって、社会が子どもによる介護に期待せざるをえなくなったのです。
 彼らは自分のやりたいことを後回しにして、家事や親族の世話をしています。ヤングケアラー自身にはそのひずみによる弊害を自覚していない人が多く、子どもらしい生活が送られないことを相談できていないのが現状です。彼らの中には苦労を重ねた上に、十分に遊ぶ子ども時代がなく成長したことで、コミュニケーション能力が育たなかったことからくる症状が見られることがあります。
 アルコールで問題を起こす父親と腎透析を続ける母親の世話と介護を子どものころから続けてきた男性の診察をしたことがあります。対人場面での緊張と不安で転院と転職をくり返していました。原因は明らかでした。こうした患者と出会う度に早期発見、支援策の推進を図ることと、彼らの苦労に対する社会的認知度の向上の必要性を感じます。
 ヤングケアラーの問題は、社会保障のすずんでいるイギリスから提唱されました。精神疾患を持つ家族をケアする子どもの調査をしたところ、親の介護力として見られる子どもへの配慮とサポートが必要であることを警告したことから始まったのです。わが国は来年から3年間をヤングケアラーの認知度向上の「集中取組時間」としています。現在、支援強化を急ぎたいと考え、実態把握に向けて調査が進められていまず。全世代型社会保障の改革は多様性の社会に介護の一翼を担っている子どもたらへと広がりつつあります。
 現代のヤングケアラーの存在は、献身的な実践を最大の供養と説く薬王菩薩本事品[やくおうぼさつほんじほん]第23の薬王菩薩とも重なります。そういった人たちの悩みや苦に寄り添える社会のシステムづくりはとても大事なことだと思います。
(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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