日蓮宗 ビハーラ・ネットワーク
 
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(宗報 平成17年6月号 第207号 改訂 第39号 33頁、35頁〜40頁)

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伝道推進委員会報告(2)

 ○ビハーラ活動講習会(入門編)
   平成17年2月7日〜8日 於 日蓮宗宗務院 参加者 35名
 ○ビハーラ活動講習会(上級編)
   平成17年3月25日 於 日蓮宗宗務院 参加者 25名


ビハーラ活動講習会(入門編)報告書

まる1開催の経緯とねらい
 新しい伝道活動は、地域社会に密着した社会教化活動をぬきにしてはその成果は望めない。「ビハーラ活動」とは「病気や障害、高齢に悩む人たちと苦しみを共にし、精神的・身体的な苦痛をやわらげ、安心が得られるよう支援する活動」のことであり、宗内外から期待されている。ビハーラ活動の基本的知識から具体的方法までを学ぶことを目的に「ビハーラ活動講習会(入門編)」が開催された。

まる2内容
 1日目
講演まる1 古河良皓師「ビハーラ活動の理念」
 ビハーラ(vihara)とは散歩して気晴らしをすること、享楽すること、休養の場所、僧院、寺院、精舎などを意味する。日蓮宗のビハーラ活動は法華経とお題目信仰にもとづき、法華経安楽行品に説かれる安楽の供養をはじめ六波羅蜜、四摂法、四無量心などの実践であり、すべての人々が仏の教えにふれ仏になることを願い導く法華菩薩道である。日蓮宗のビハーラ活動の精神は、地湧の菩薩の代受苦・常不軽菩薩の仏性礼拝の精神などに見いだす事ができる。
実習まる1 林妙和師「ビハーラ活動の実習」
 ビハーラ活動は向き合う相手を理解することから第一歩が始まる。立ち上がり・喫飲食動作・歩行動作・手指関節動作・視覚・薬の選択識別動作・表示の選別識別・視覚などの実習プログラムを耳栓、老眼鏡、荷重チョッキ、肘膝靴型サポーター、手袋などを使用しそれぞれ疑似体験した。実習により高齢者や家族がかかえる日常生活や介護上の問題を具体的に学ぶことができた。
講演まる2 今田忠彰師「ビハーラ活動の実践」
 ビハーラ活動の第一歩はお見舞いである。檀信徒が病気だと聞いたら、まず家族に相談し、病状や経過を聞いてお見舞いに行ってみよう。宗教家としては金品より信仰というお土産が第一である。病人と対面するときは目線を下げ、家族の労をねぎらうとともに傾聴に専念したい。安易な励ましは禁物であり、あくまでスピリチュアル・ペイン(霊的痛み)を和らげることが大切である。正直で素直なことが病人との信頼関係を築く基本である。
講演まる3 柴田寛彦師「上級編への誘い・NVN紹介」
 「ビハーラ活動講習会」入門編の修了者を対象にビハーラ活動講習会の上級編が開催される。上級編はビハーラ活動の実践を志す人たちが、具体的方策を修得するための講習会であり、是非とも参加していただきたい。日蓮宗のビハーラ活動を普及推進するとともに会員相互の情報交換と協力連携を図ることを目的に日蓮宗ビハーラ・ネットワーク(略称NVN)が結成されている。ビハーラ活動講習会を受講した教師が中心メンバーとなり、総会をはじめ、研修会の開催、教箋やNVNニュースの発行、お見舞い用タオル・カード型守り等の活用促進、ホームページの開設など他方面に展開している。
 2日目
講演まる4 渡部公容師「カウンセリング入門」
 カウンセリングの基本には、傾聴・受容・共感的態度・自已治癒力(自然治癒力)などがあげられる。傾聴つまり聴くことはカウンセラーの基本的態度であり、心構えである。傾聴の注意点としては、ラポール(信頼感)の形成、受容と共感、沈黙と間、言葉の反復と明瞭化などである。助言することは大切だが、忠告や強い励まし、議論は禁物である。また、表情や態度などの非言語的表現から相手のメツセージを読み取ることも大事である。
講演まる5 渡部公容師「ロール・プレーイングの解説」
 ロール・プレーイングとはカウンセリングの実際的学習法で、聴くことの訓練である。具体的には、問題や悩みを想定しクライアント役がカウンセラー役に相談すると言う形で実際のカウンセリングのように行い、それをオブザーバーが観察する。交替でそれぞれの役を演じると効果的である。
実習まる2 「グループ別ロール・プレーイング」の実習
 参加者を6グループ(各5〜6名)6会場に分け、介護・癌告知・うつ病・障害などをテーマに実習した。1回の実習時間を20分(実習10分+感想10分)に設定したので各グループとも5回ほど実習ができた。初対面同士でカウンセラー役とクライアント役を組み合わせた方が効果的だった。テーマはビハーラ講習に適切なものが選ばれた。聞き役、相談役、オブザーバーと違った役をそれぞれ演ずることで理解が深まったようだ。

まる3参加者の声(アンケートより抜粋)
実践の映像や具体的実例を示したうえでの活動報告が知りたい。
被害者の心のケア・死の準備教育・中高年の自殺防止などについて学びたい。
内観法なども含め定期的に勉強会を開催して欲しい。
お見舞い活動の実習をしたい。
改良服を来て病院にお見舞いに行けるように頑張りたい。
ビハーラ精神を活かした駆け込み寺などについて学びたい。

まる4今後の課題
 ビハーラ活動の基本理念の理解は、今後ビハーラ活動をして行くうえで最も大切な事柄であり入門編の目的でもある。参加者の意見によると、基本理念の理解、各講義については概ね好評だったと言える。しかし、ビハーラ活動の基本理念の理解と実践例の紹介、実習等の時間配分について多少無理を感じた。次回は講義の時間配分を検討する必要があると思われる。種々課題もあろうが、非教師にも参加できるよう工夫できないだろうか。今後ビハーラ活動への取り組みを教師だけでなく、檀信徒を含めた活動として広げていくにはどうすればよいか検討する必要があると思われる。
(担当委員 楠山泰道・中山観能・斉藤哲秀・奥田正叡)


ビハーラ活動講習会(上級編)報告書

まる1開催の経緯とねらい
 近年、病気や高齢化、障害などで苦しむ人たちに精神的な癒しや安心が得られるよう支援する活動に対して宗教者への期待が高まっている。いわゆるビハーラ活動である。宗門ではこれまでにビハーラ活動の基礎知識修得のために、「日蓮宗ビハーラ講座」並に「日蓮宗ビハーラ活動講習会(入門編)」を開催してきた。今回それらの修了生を対象として「日蓮宗ビハーラ活動講習会(上級編)」が開催された。この「日蓮宗ビハーラ活動講習会上級編」は、これからビハーラ活動の実践を志す人たちが、具体的方策を修得するための講習会である。

まる2内容
講演まる1 藤塚義誠師「グリーフケアの理念と実践」
 グリーフとは人が愛し依存する対象を失って生ずる悲しみの感情を言う。その悲しみを受け入れ新しい生き方に気づき、再出発するまでに必要な作 行[※1]をグリーフワーク(喪の作業)と呼ぶ。このグリーフワークをするために、周囲が援助することをグリーフケア(悲嘆援助)と称している。これは1960年代に米国で生まれた新しい精神科学、心身医学の分野である。死別の悲しみには「予期悲嘆」と「死別後の悲嘆」がある。予期悲嘆とは自分の愛する人がまもなく死を迎えることを知り、その死を予期して悲しむことである。死別の悲しみを先取りするわけだが、実はそれによって本当に死を迎えたときの心の準備が少しづつ[※2]できてくる。この予期悲嘆は死が近づくにつれ強くなり、愛する人の死とともに終わりとなる。そして死と同時に、今度は死別後の悲嘆が始まるのである。
実習まる1 林妙和師「医療現場とビハーラ活動」
 ホスピスや緩和ケア病棟ではともかく一般医療では患者や家族に対する支援態勢は未だ整っていない。WHO(世界保健機構)の規定によれば「緩和ケアの最終目標は患者とその家族にでき得る限り良好なQOL(生活の質)を実現させることにあり、ケアの対象は患者だけでなく家族も含まれる」とある。病む過程から死別に至るまで患者と同様に家族も精神的、肉体的、社会的に何らかの問題を抱えいる[※3]。いま人生において必要な時に必要な心のケアができる身近な存在として、悲嘆軽減に対する宗教者の働きかけが求められている。今、医療現場では患者や家族と目線を同じくして寄り添い、苦しみや訴えを十分傾聴し共有できる存在としての僧侶の活動が求められている。
講演まる2 柴田寛彦師「宗教と医療とビハーラ活動」
 医療における仏教界の対応の問題点としては以下の点が指摘されている。かつて仏教が担っていた医療における役割が途絶え医療現場に適応するノウハウを喪失していること、医療に携わる仏教者の人材育成の遅れ、現代に適応する看取りの在り方の方法論が不備していること、医療や介護の場の不提供などである。終末期における宗教者の役割としては、本人が自分の生涯を価値あるものとして納得しやすいように精神的に支えること、死にまつわる不安を解消し安心を与えることなどがあげられる。日蓮宗のビハーラ活動は法華経安楽行品に説かれる安楽の供養の実践であり法華菩薩道の実践と位置付けられるが、ビハーラ活動を通して仏教的霊性を再認識し、家族や遺族にいたわりの心をもって共に霊山往詣するための葬儀や法要儀式のありかたを再検討し、よろこび・はげまし・やすらぎのある死生観の再構築が必要である。

まる3参加者の声(アンケートより抜粋)
うつ病や薬物中毒の家族をもつ人へのビハーラ的対応を学びたい。
講演だけでなく傾聴やカウンセリングなどの実践も取り上げてほしい。
地方での講習会開催を希望する。
グリーフケアにそった葬儀や通夜の説法、引導文の実例を学びたい。
実社会でビハーラ活動されている僧侶の体験報告を取り上げてほしい。
他宗派のビハーラ活動についても学びたい。
ホームページで発信して欲しい。

まる4今後に向けて
 より多くの内容を提供したいと考え上記内容となったが、もう少し日程的にゆとりが欲しかった。一日間の日程ならば、講演時間90分で2講演ぐらいが時間的には良いのではないか。上級編なのでより具体的実践的な内容が望ましい。予算的問題もあろうが今後は寺庭や関心ある檀信徒など非教師にも参加できるよう検討してはどうか。初級編[※4]を修了し問題意識を持った方々が参加されたが、講習を受けた方は自分で出来ることからビハーラ活動を実践していただきたいと思う。読者の中には既にビハーラ活動を実践されている方がおられる。この講習会を充実させるためにも是非とも情報を知らせていただきたいと思う。
(担当委員 楠山泰道・中山観能・斉藤哲秀・奥田正叡)

注)
 原文は縦書き。漢数字を算用数字に変更。
 表現がおかしいところも、原文のまま掲載。
  以下、→の左側は、→の右側が正解と思われる。
   ※1 作 行 → 作業
   ※2 づつ  → ずつ
   ※3 抱えいる → 抱えている
   ※4 初級編 → 入門編
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