日蓮宗 ビハーラ・ネットワーク
 
HOME > TOP > お知らせ > 関連記事 > 宗報より
(宗報 平成17年8月号 第209号 改訂 第41号) (下)

NVNトップメニュー
NVNについて
ビハーラ活動とは
NVNニュース
ビハーラ活動講習会
ビハーラグッズ
心といのちの講座
お知らせ
 関連記事
  宗報より
 レポート

会員限定
全国社会教化事業協会連合会報告
ビハーラ活動のすすめ(上)
日蓮宗ビハーラ・ネットワーク 世話人代表
秋田県 本澄寺  柴田寛彦  

 本年度から、日蓮宗ビハーラ・ネットワークが全国社会教化事業協会連合会に加入することになりました。ビハーラ活動とはいっても、まだまだなじみが薄いと思いますので、日頃の活動の一端を紹介し、ご理解をいただきたいと思います

 ビハーラ活動とは
 ビハーラ活動とは、以下のように定義付けられています。
 「ビハーラ活動とは、医療や福祉や地域社会との連携のもとに、寺院において、自宅において、あるいは病院や施設において、病気や障害、高齢化に悩む人たちと苦しみを共にし、精神的、身体的な苦痛を取り除き、安心が得られるよう支援する活動のことです。
 日蓮宗のビハーラ活動は、すべての人々が仏の教えにふれて仏になることを願い導く法華菩薩行であり、法華経安楽行品に説かれる安楽の供養をはじめ、六波羅蜜(布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧)、四無量心(慈、悲、喜、捨)、四摂法(布施、愛語、利行、同事)の実践であると位置づけられます。」
 もともとビハーラとはサンスクリット語で、「配置、楽しむこと、休養の場所、仏教の寺院」などを表す名詞です。漢訳では「行、行住、安住、僧坊、精舎」などと訳されています。つまりビハーラとは、休養する場所、あるいは安らぎや楽しみがもたらされる場所という意味です。インドでは今でも、仏教の僧院はビハーラと呼ばれています。仏教の僧院、つまり寺院は本来、仏の教えに導かれて安らぎや楽しみがもたらされる場所であるという意味が、このビハーラという言葉に含まれていると思われます。更には、修行僧が修行に疲れた体を休めて楽をもたらす、あるいは病気になった僧を看病して安楽をもたらす、という意味も含まれていると思われます。寺院には本来、修行や法要儀式の場としての機能と、仏の教えによって安らぎや癒しがもたらされる場所としての機能との、両者が兼ね備わっているものですが、現代において、後者の機能の充実、つまりビハーラとしての寺院の姿を取り戻すことが重要な課題でありましょう。ちなみに、法華経安楽行品のサンスクリット語表記は、スクハ・ビハーラ・パリバルタ sukha-vihara-parivarta となっています。
 キリスト教的背景を持ったホスピスとの対比において、仏教的終末医療の場をビハーラと呼称する場合もありますが、私たちはビハーラの意味を広義にとらえ、限局したある特定の場所や施設のみをビハーラと考えるのではなく、真の安楽がもたらされるところはどこでもビハーラであり、すべての場所をビハーラにしていかなければならないと考え、その活動をビハーラ活動と呼んでいます。

 ビハーラ活動講習会
 本宗のビハーラ活動の歩みは、日蓮宗中央教化研究会議(以下中央教研)から始まったといってよいと思います。中央教研の社会問題部会で、二十年来、病名告知や脳死臓器移植、末期医療のあり方、高齢化社会への対応など、医学医療の発展に伴う種々の問題について宗教的側面からの討議を重ねてきました。その中で、「日蓮宗医療問題研究会」(現在は「日蓮宗生命倫理研究会」に改称)が発足し、研究活動と平行して、実際に病気や障害、高齢化に悩み苦しむ人々に対して、日蓮宗教師がどのような支援・教化活動を展開すべきか、具体的な方策を探る中から、「ビハーラ講座」(現在は「ビハーラ活動講習会」に発展)が生まれました。平成八年のことです。
 講習は、高齢者への教化活動、がん告知患者への支援活動、ボランティア活動、お見舞い活動等に参加を志す教師に対して、宗門として、これらの活動を行なうに際して必要な基本的な知識、情報、具体的な方法等を伝え、共に学ぶことを目的として開設されたものです。講座の充実のために、各種のアンケート調査や、「日本福祉大学」、「中央福祉専門学校」、「老人保健施設『あうん』」、「身延山病院」、「深敬園」、「養護老人ホーム『功徳会』」、「長岡西病院ビハーラ病棟」等の見学・研修を重ねました。
 現在「ビハーラ活動講習会」は伝道部所管で「入門編」と「上級編」に分けて開催されています。「入門編」は、これから始めてビハーラ活動に取り組みたいと考えておられる方々を対象にした、ビハーラ活動の基礎知識、基本的な方法の修得を内容とするもので、平成十六年度は、「ビハーラ活動の理念」、「ビハーラ活動の実践」の講義、及び「ビハーラ活動の実習」等が内容でした。「上級編」は、すでに講座を受講した人や実践されている人を対象としてその内容を深めるためのもので、平成十六年度は「グリーフケア―死別の悲しみを支える」がテーマでした。

日蓮宗ビハーラ・ネットワーク発足
 平成八年度から始まったビハーラ講座ですが、受講者が延べ百名をこえた平成十一年頃から、全国各地で活動している教師の連絡を密にするための何らかの組織が必要だとの声が上がってきました。そこで、平成十三年六月、日蓮宗のビハーラ活動を普及・推進するとともに、会員相互の情報交換と協力連携を図ることを目的として、日蓮宗ビハーラ・ネットワーク(NVN)が発足しました。設立時会員数は一二七名でした。平成十七年六月時点で会員数は一五〇名になっています。
 NVNの主な活動内容は、年一回の総会及び研修会、会報の発行、ホームページでの情報提供、メーリングリストによる会員相互の情報交換(これは会員限定です)、ビハーラグッズ(お見舞い用のタオル、カード式お守り等)の制作、パンフレットの作成、出版(現在「千代見草」現代語訳出版に向けた作業中です)等です。ホームページのアドレスは、http://www.nvn.cc/ですので、どうぞ覗いてみてください。
 これまで年一回、総会に併せて開催される記念講演では、宗門内外でビハーラ活動を実践されている方々の貴重なお話を伺ってきました。その一部を以下にご紹介します。なお、詳細はホームページに掲載しています。

 研修会報告まる1
 平成十五年度の記念講演は、大分県中津市の寺町クリニック院長、精神科医の太田喜久子先生をお招きし、「精神障害者への地域生活支援」と題する講演を聞きました。先生は、大法寺(太田全士住職)の寺庭婦人でもあり、二男三女の母親でもあります。
 日本に於ける精神疾患治療の歴史は、「一〇〇年前までは座敷牢に監置されていたものが、精神病院での病院治療が主体となり、ごく最近になって、精神病院のサテライトとして、精神科診療所が増えてきた。精神科診療所には、精神病院の入退院者を対象にしたものと、いろいろな心の問題を扱うものとがあり、現在は後者の方が増えてきている。支援施設としては、デイケア、福祉ホーム、グループホーム、授産施設、共同作業所、生活支援センター等がある。精神科診療所等の医療が中心となり、住居提供、日常生活の支援、作業所、ハローワークなどの社会資源が一体となってネットワークを作ることによって、精神障害者の地域支援が行われている。」とのこと。
 先生は、一九九四年に精神科診療所「寺町クリニック」を設立、デイケアを併設、一九九五年に社会復帰施設の福祉ホーム「つたの苑」、一九九九年に居宅支援事業のグループホーム 「たまき苑」、二〇〇〇年に生活支援センターの代わりとなるバンク寺町、二〇〇一年に共同住居を設立、現在、医師一名、看護師五名、事務員二名、ソーシャルワーカー三名、栄養士一名、指導員三名という組織で運営され、様々な取り組みによって、精神障害者の方々が地域で普通に生活できるよう、種々の支援を行っています。
 精神科医でもあり、寺庭婦人でもあり、家庭の主婦でもある太田先生は、「寺庭婦人という場を超えた心の出会いを、今は大切にしたいと思っております。」と締めくくりました。
 ビハーラ活動は、「精神的、身体的な苦痛を取り除き、安心が得られるよう支援する活動」でありますから、宗教的側面と共に、精神科的側面からも心の問題に対する理解と対処法を基本として心得ておくことが必要でありますが、本宗の寺庭婦人でその道の専門家がおられることはとても心強いことです。
(以下次号)
この頁の先頭へ▲