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生老病死と向き合う あなたのそばに
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日蓮宗新聞 令和7年6月20日号
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ありがとうの一言を
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齊藤 耀慧
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「迷惑をかけてしまう」と悩まず、今を楽しんで
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月に1回、特別養護老人ホームで入所者と話す機会があります。
いつもちょっと離れたところにいるMさんは、施設の行事にも消極的でデイサービスにも参加したがらないそうです。
ある日、私が「今日は、お天気も良くて、いつもより暖かいですね。施設でお花見に行く計画があるようですよ」と話しかけました。
「そのようですね。私は、行かないから」。Mさんは、移動には車いすを使い酸素ボンベを必要としています。続けてまたMさんは「車いすだし、乗り降りにも時間がかかるし、みなさんに迷惑がかかるから行かないの。長生きしすぎたかもしれないわ。早くお迎えが来ないかと思っています」と言い終えるとぐっと口元を結びました。そしてよく見ると、その唇は小刻みに震えていました。
Mさんもきっと、みんなと一緒にお花見をしたいのではと思います。
病気になったから、自分の思うように身体が動かなくなったから、だから周りの人に迷惑ばかりかけているから…。決してそのようなことはありません。
例えば、外出したときに自分をフォローしてくれた人に「ありがとう」と伝えてください。その言葉をもらった相手は、それだけで気持ちが安らぎます。
難しく考えていると伝える機会を失ってしまいます。迷惑だなんて考える必要はないのです。相手の行為が有り難く感じたなら素直に「ありがとう」と言葉で伝えましよう。周りの評判ばかり気にしていると自分のやりたいことができなくなってしまいます。
人として生まれることは難しく、今生きていることも“有り難いこと”。私たちの命は、いま生きているこの瞬間だけのもの。誰にも期限を決めることなどできないのです。
どうか今をもっと楽しんでください。
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(日蓮宗ビハーラ・ネットワーク会員)
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