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日蓮宗新聞 令和8年10月10日号
障がい児の母の叫び
今田 忠彰

私らだって、生身の人間だから

 私が障害者特定相談員として担当しているAさんの母親から、思いもよらない訴えを聞いた。
 「重度の障害を持つ子どもを産んだ母親は、我が子に自分の人生をささげるよう期待されている」と。
 私は「毎日、介護で大変だな」とは思ったことはあるが、人生をささげて、などと思ったことはないのだが…。
 でも母親たちには、世間からの声なき声が聞こえてくる。それは、期待なのか使命なのか分からないが、大きな心の負担になっている。
 生まれながらに重度の障がいがあると、まず生命の危険がある。この時期を何とか乗り越えると、次に療育と介護の問題が出てくる。普通の子どもと違って、毎日の育児とともに、病院や介護施設との交渉が限りなく続く。休む暇などない。起きている時も、寝ている時も、24時間緊張の連続である。
 行政としても、何らかの支援を徐々に充実させてきてはいる。短期入所という施設の支援があるが、これが母親にとっての唯一の息抜きなのだろう。しかし、熱したとか、具合が悪いから、といつ呼び出しがあるかわからない。
 病院で我が子の将来を心配して涙を流していると、「そうやってお母さんが泣いていたって、子どもは治りませんよ」とお叱りを受ける。母親には泣くことも許されないのか。
 親が高齢になると、「この子を置いては死ねない。愛する子どもなら、親が愛情で殺してやるしかないのか」と思いつめたりもする。
 「私らだって、生身の人間だから、たまには美味しいものを食べたり、旅行に行ったりもしたい」。
 それはそうだろう。だから、母親たちには、「頑張って!」とは励まさない。もうずっと頑張ってきているのだから。
 (日蓮宗ビハーラ・ネットワーク世話人)
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